工場や公共施設の汚水排水処理の設備において、異物による水中ポンプの詰まりが、業務上、大きな負担となっています。
食品工場で排水処理を行っている場合は、製造工程で発生する食品残渣や、工場内のトイレから誤って流されたマスク、ニトリル手袋といった多種多様な異物が原因となり、ポンプが頻繁に運転停止に追い込まれています。
ポンプが詰まってしまうと、引上げ・分解・清掃という不衛生で危険な作業が発生することになります。
この対応には一度に数時間もの時間と多大な労力が必要となり、昼夜を問わず発生する突発的なトラブル対応は、現場の担当者にとって大きな精神的負担となっているのが現状ではないでしょうか。
そこで今回は、異物を粉砕・通過させながら、高いポンプ効率で運転コストを削減する水中ポンプをご紹介します。

従来の汚物用ポンプでは、詰まりに強いとされるボルテックスタイプやノンクロッグタイプの羽根車を採用しても、繊維質や硬い異物など、流入する多様な異物に対応しきれず、詰まりを解消することができません。
これに対し、今回ご紹介する水中ポンプは、詰まりの原因となる異物を効果的に処理し、異物通過性と高効率を両立させることが可能になります。
異物を粉砕しながらスムーズに移送する仕組み
この水中ポンプは、特殊な機構によって革新的な通過性を実現しています。
まず、サクションカバーには独自の突起部が設けられており、異物が羽根車の入口に絡みつくことを未然に抑制する効果があります。
次に、羽根車のブレード部が回転する際、サクションカバーの突起部との接点を利用し、流入した異物(例えば、硬いアルミ缶やペットボトル)を細かく砕きながら、ポンプ内部へ押し込んでいく動作をします。
さらに、羽根車のボス部の先端が傾斜している設計のため、トラロープなどの長尺物を含む異物が吸込み部に滞留し続けることを防ぐようになっています。


メーカーの通過性試験
特長
高効率化による省エネルギー性能
異物通過性を確保しながらもポンプ効率を向上させる設計のため、高効率化を実現しています。
従来の製品と比較しても、ポンプ効率に優れており、同一の揚程条件下で吐出し量を増やすことが可能となります。
その結果、運転時間の短縮に繋がり、消費電力やCO2排出量の削減に寄与します。
軸封装置(メカニカルシール)の長寿命化を実現する技術
水中ポンプの耐久性を支える主要部品の一つである軸封装置(メカニカルシール)には、長寿命化のための登録技術が採用されています。
この技術は、オイル量が減少しても、ポンプ運転時にモータの回転による遠心力を活用し、オイルを上昇させることで、メカニカルシールの摺動面を常に潤滑・冷却し続けます。
これにより、安定したシール性能が維持され、ポンプの耐久性が高まるため、保守にかかる手間も軽減します。
摩耗に強く振動を低減する羽根車
水中ポンプの羽根車は、従来のノンクロッグ型羽根車に比べて重量が約3分の1に抑えられています。
また、左右対称の2枚羽根構造を採用しているため、摩耗が生じた際にもバランスを崩しにくく、振動を小さく抑えることが特長です。
この低振動化は、軸受や軸封装置の消耗を抑制する効果を発揮し、ポンプの安定的な長期稼働に貢献します。
多様な用途への適用性
この水中ポンプは、食品工場の汚水排水処理施設での利用実績が多いだけでなく、製鉄所や食品工場などにおける高温の液体を排水する用途にも対応できる、耐熱仕様の水中ポンプの製作も可能です。
さらに、雨水排水設備へ設置することで、集中豪雨時の冠水対策(BCP対策)としても注目されています。
導入メリット
閉塞リスクの大幅な低減と作業員の負担解消
異物によるポンプの閉塞リスクが大幅に低減されることが確認されています。
実際に、ある下水処理施設での導入事例では、他社製ポンプで1日に2回以上発生していた詰まりが、この水中ポンプへ切り替えた後は「ほとんど詰まりがなくなった」という高い評価を得ています。
詰まり対応が解消されることで、これまで毎日行われていた不衛生かつ危険なポンプの引上げ・清掃作業から作業員が解放されます。
人件費と作業時間の削減および安心感の獲得
ポンプの詰まり対応がなくなることにより、現場での対応工数が削減され、その時間を他の付加価値の高い業務に充てることが可能となります。
仮に、詰まり対応で1日合計4時間費やしていた作業負担がゼロになる場合、その経済効果は大きいといえます。
さらに、詰まりによる警報で休日や夜間に呼び出される心配がなくなるため、現場担当者にとって、この「安心感」が大きなメリットになります。
低コストでスムーズな設備更新が可能
この水中ポンプは、既存の着脱装置をそのまま流用できる場合が多く、さらに他社製着脱装置に対してもアタッチメントを製作することで対応可能な製品があります。
そのため、大規模な改修工事を伴わずに導入コストを抑えながら、スムーズに設備更新ができる点も、メリットとして評価されています。
排水処理設備の詰まり問題は、メンテナンスの手間だけでなく、作業の安全性や運営コストにも影響を与える課題です。
今回ご紹介した水中ポンプは、異物詰まりのリスクを低減するだけでなく、高効率運転を通じて現場の負担とコストを軽減する効果的な解決策となります。
ポンプの更新をご検討の際には、ぜひこの高効率で通過性に優れた水中ポンプの導入をご検討ください。
食品工場物流ナビを運営する板橋工業では、豊富な商品知識を持ったスタッフが、お客様の要望や状況を丁寧にヒアリングし、最適な提案をさせていただきます。どうぞ、お気軽に食品工場物流ナビへお問い合わせください。
